新名盤

2002年5月11日

 第2回

 サム・スカンク・ファンク/マンハッタン・ジャズ・オーケストラ
      (Videoarts)

国内盤は4月24日発売

Some Skunk Funk/Manhattan Jazz Orchestra(Video Arts Music)
Recorded February 11, 12, 17 and 18, 2002.
David Matthews(Arr, Cond, P), Lew Soloff(Tp), Walter White(Tp),
Bob Milliken(Tp), Scott Wendholt(Tp), Jim Pugh(Tb), Larry Farrell(Tb),
John Fedchock(Tb), Dave Taylor(Btb), John Clark(French Horn),
Fred Griffin(French Horn), Tony Price(Tuba), Chris Hunter(As, Fl),
Aaron Heick(Ts, Ss), Roger Rosenberg(Bcl), Chip Jackson(B),
Terry Silverlight(Ds), Guest: Ryan Kisor(Tp), Andy Snitzer(Ts)
1. Some Skunk Funk 2. Theme From Good King Bad 3. Scarborough Fair
4. I Got You (I Feel Good) 5. L.A. Is My Lady 6. Tell Her About It
7. N.Y. Is My Love


「現代ビッグ・バンドのカッコ良さ」

 デヴィッド・マシューズのジャズはジャズではない、と言う人はけっこう多い
ような気がします。私は4ビート体験のはじめの方で、マンハッタン・ジャズ・
クインテットのファーストアルバムで強烈な洗礼を受けているので、彼のジャズ
について違和感なく受け止めています。ある種独特なサウンドも当然だと思って
いたので、まわりから批判を浴びつつも今日までファンであり続けています。
 さて、今回はオーケストラ作品。目玉は1曲目のブレッカー・ブラザース作の
「サム・スカンク・ファンク」。この難曲をドラムス、ベースとホーンセクション
だけで緻密な迫力のあるアレンジで聴かせてしまうあたり、やっぱりスゴいなあ
と思わせます。私もブレッカー・ブラザースで狂喜乱舞した世代なので、ホント、
何度もこの曲ばかりを聴き返してしまいました。
 他にも各方面の有名な曲が並んでいるのがうれしいところです。曲によって、
ファンクのビートだったり4ビートだったり、あるいはソロの部分に入った途端
に4ビートを刻み出したりと、けっこう変幻自在。しっとり感では5曲目あたり
が聴いていてホッとします。これに対して2、7曲目を彼のオリジナルだと言い
当てるのは難しいのでは。ただし2曲目はジョージ・ベンソンが演奏していた曲
だそうですが。それだけ他の曲と溶け込んでいます。
 ホーン・アレンジは、売れそうな分かり易さと同時に、けっこうマニアックな
アレンジが潜んでいる気がします。ホーンはフレンチ・ホルンやチューバなども
加わった低重心型で、緻密なアレンジを聴けば、ああデヴィッド・マシューズの
サウンドだと気がつくでしょう。もちろん各曲でのホーンのソロもなかなかです。
まあ、一度聴いてみて下さい。

工藤 一幸

ジャズCDの個人ページ 工藤一幸さん)  

 

Jan Lundgren"Lonely one"Marshmallow

Jan Lundgren (p) Jesper Londgaard (b) Alex Riel (ds)
recorded April.24.25.2001
1.Will you still be mine
2.The Lonely one
3.Jitterbug waltz
4.When sunny gets blue
5.Blues for Jesper
6.Trubbel
7.Caravan
8.A new town is a blue town
9.Falling love with love
10.One for my baby
11.Who can I turne to


「ただ者ではない魅力たっぷりのピアノ・トリオ」

 暫く何も聴かずにジャケットだけ見ていたい気分です。 きっと優しいメロディが流れるのだろうと予測していたの ですが、なんと開けてびっくり玉手箱。ガッツな演奏が 私の度肝を抜きました。"Will you still be mine"です。 ラングレンは静かな曲をガッツにやるひねくれ者?さて 2曲目はタイトル曲でしっとりとまさにこのジャケットその ままのセンチメンタルな演奏です。なんと良い曲なので しょう。誰かさんなら泣いて喜ぶ、いや私自身がもう泣き に入ってしまいます。もうこれだけ聴けたら充分という感 じです。そうもいかない。3曲目です。"Jitterbug waltz"。 どこかで聴いたことがあるなと思いつつ思い出せないもど かしさ。川の流れのようなメロディに聴き惚れます。良い 曲を選ぶものです。次は誰だったかまた思い出せない わからないまま演奏はどんどん進んでしまいます。わか った!そうソニー・クリスです。あの下品うらぶれパーカー のクリスです。"This is Criss!"に入っているあのトラック です。とわかったところで安心しました。さて次に行きま しょう。次はラングレンがトリオ・メンバーのベーシストの イエスパーをテーマにしたブルースです。まあ普通のブ ルース演奏です。これは凄い!とか言えない。でもイエスパー が自分の曲とばかりに名演を聴かせてくれます。 ここの部分を聴くとやっぱり凄い。悪かったのはラングレ ンの方です。普通に弾いちゃっているからです。次は泣 かせるベースから始まる"Trubbel"です。ああ、もうほん とに泣いちゃうかも。と思っていたらスウィングするトリオ 演奏に変わりました。やるじゃんって感じです。やっぱり このトリオは普通じゃない。ただ者ではありません。そし てまた哀愁感あふれるベースのテーマ演奏が入って終 わります。文句なくベスト・トラックのひとつです。さて次 は"Caravan"。「キャーラーバーン!!」って感じです。 グッド、グッド!!もうテーブルをピアノ代わりに弾い てしまう程乗りまくります。アレックス・リエルのタム タムが抜群にいい。8曲目は静かな演奏で"A new town is a blue town"。エヴァンスのような弾き方の ラングレン。といってもエヴァンスも色々弾き方があり ますが。例えば"My Romance"を弾いた時のエヴァ ンスを思い浮かべてください。ああいうやつです。次 はチェットあたりが得意とした"Falling love wi th love" です。ラングレンが抜群に乗って弾いています。 10曲目はOne for my baby"。ララバイ的とでも言い ましょうか。子守歌ですね。今ふと思いついたのです が、同じスウェーデンのピアニスト、ピーター・ノーダル は鍵盤の高音部を良く多様するのですが、ラングレン は割と中音部が多いと気がつきました。最後の曲になっ てしまいました。"Who can I turn to"です。ここでもイエ スパーのベース・ソロが入っています。この人のベース はいい。写真でみるイエスパーは普通のサラリーマン みたいですが、ナイスなベイシストです。

菅野 寛

Baker's Holidayへようこそ! 菅野寛さん)

 
Helle Hansen Group / You Can't Save This in The Mix

(Music Mecca CD-3064-2 2002年 フランス盤新譜 /2001年6月吹き込み)

Helle Hansen Group
Helle Hansen(vo)
Jimmi Riise(sax,fl,cl)
Henrik Gunde(p,Nordlead)
Kaspar Vadsholt(ac-b)
Morten Lund(ds,bg-vo)
Recorded at Barcelona /Sep. 2001


「カラフル・メリーゴーラウンド」

有名無名に関わらず面白そうな新譜を追いかけていますと、時に未知の人から
思いがけず新鮮なインパクトを感じることがありますが、このヘレ・ハンセンはまさ
にその瞬間にぶち当たった気がしました。ジャズ・ヴォーカルものでは一際印象的
な作風で、ラテン〜ボッサ〜ブルース〜バラッドと、まるで歌のメリーゴーラウンド
なのですが、全曲が彼女のオリジナルでありながら、いずれもがいつか何処かで
聴いたような身近な歌なのが好感度高いです。もろキャッチーなテーマのラテン・ナ
ンバーからルイス・ボンファ風の哀愁味漂うボサノバと続く辺りで確実にお気に入り
決定という手応えです。スインギーな小品にも叙情的なバラッドにも、そこはかとなく
ヨーロッパ特有の気品が漂っていて、パリの夜景に自然に溶け込む要素大です。
バンドのメンバーではピアノのヘンリック、サックスのジミーの二人の存在が重要な
ファクターで、陰影に飛んだサポートが全体のグレードを決定付けています。
白岩 輝茂

【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩 輝茂さん)

 

Masabumi Kikuchi / The Slash Trio 2°(01.9.10-11 Jp-P.J.L)

菊池雅章(p),菊池雅晃(b),吉田達也(ds)

(1)9.28 (2)Slash 1°(Long Version) (3)T's Monk


「音の唯物運動とよびたい小傑作」

本作はP.J.L第3作。The Slash Trioの第2集。第1集と同日録音、悪かろうはずも
残り物であろうはずもない。むしろ、あい補完するというか、このメガトン級の
ユニットの全貌を知るには不可欠といいたい。その凄味に改めて圧倒されること
うけあう。ユニットは「純粋に音だけで勝負している」(村井康司氏)のだから、
聴き手も全身を耳にして純粋に音だけに集中すべきだろう。静寂すら、ひりひり
張り詰め気を抜けない。作曲者のクレジットはないが自作ないし共作だろう。
演奏について、以下の第1集へのコメント(02.3.22)に付け加えることはない。

断片を切り出す菊池、粘着音の雅晃、乾いた音で空間を敷きつめる吉田、一切の
観念性を排し、純粋に音だけをアウトプットすべく、挑発や格闘には持ち込まず、
同じベクトル、高度の駆け引きで突き進む。音の唯物運動とよびたい小傑作。

林 建紀

JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)

 

スターダスト/ビル・チャーラップ

  2002年4月26日発売
  TOCJ 66163(東芝EMI BLUE NOTE)
  ¥2,548(税込)

 ビル・チャーラップ  (p)
 ピーター・ワシントン (b)
 ケニー・ワシントン  (ds)
(ゲスト)
 トニー・ベンット    (vo)
 シャーリー・ホーン   (vo)
 ジム・ホール      (g)
 フランク・ウェス    (ts)

 1.Jubilee
 2.I Get Along Without You Very Well
 3.Rockin’ Chair
 4.I Walk With Music
 5.Two Sleepy People
 6.The Nearness Of You
 7.One Morning in May
 8.Blue Orchids
 9.Georgia on My Mind
10.Stardust
11.Skylark
12.Little Old Lady


「多彩なゲストも楽しいリラックス盤」

VENUS盤の通称「水上スキー」(ゴールドディスク)をこよなく愛する私は
チャーラップの新譜を心待ちにしていました。今回のBLUE NOTE盤は
低域の豊かな(豊かすぎる?)VENUS盤と違い自然なバランスの録音で
聴き疲れしません。(もちろんあのグラマラスな音も大変魅力的ですが)
前作のsomethin’else盤よりも更に癖のないフラットな録音ですから
多くの人に素直に受け入れられそうです。
長く続いている二人のワシントンとのコンビネーションは安定感があり、
ゲストの大御所たちも余裕たっぷりに楽しんでいる様子が窺えます。
ホーギー・カーマイケルの有名曲を小細工なしで平凡に演奏する非凡さ、
ここらをお茶でも飲みながら味わってみようじゃありませんか。

片桐 俊英

 



  制作者:片桐俊英  メールはstep@awa.or.jpまでお願いします

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