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2002年1月 第38回作品

フロム・ニューヨーク/アキコ・グレース

2002年1月12日発売  日本コロムビア(Savoy) COCB 53003 税込み¥2,940

アキコ・グレース

1.Never Let Me Go (Short Version)
2.Delancey Street Blues
3.I’ve Seen It All
4.You Don’t Know What Love Is
5.You Must Believe In Spring
6.The Last Smile Of You
7.Voice Of The Sphere
8.Inner Conflict
9.Texture
10.My Favorite Things
11.Never Let Me Go (Full Version)

Akiko Grace    (p)
Ron Carter     (b)
Bill Stewart    (ds)


「美人に見えたり十人並に見えたり」

本作はJp-Savoy第1作。Ron Carter(b)、Bill Stewart(ds)を迎えた初リーダー作。
自作5曲、スタンダード等6曲。ポートレイトと同様に、アングルによって美人に
見えたり十人並に見えたり。ファストは弾き流しに響きガツンとくるものはない。
バラードはその名の通り優雅だがグッとまでこない。落ち着き払い過ぎたのでは。
決定的な吸引力を欠く。名手達(Carterもそうか?)は「お仕事」しているだけだ。
ショップをにぎわす十人並のピアノ・トリオに満足できる方ならお求めあれ。

評点:★★★(三つ星)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「研ぎ澄まされたフレージング」

 アキコ・グレースという日本人ピアニストのデビュー・アルバム。彼女のオリジナ ルは
全11曲中5曲もあって、けっこう楽しめそうです。さてどんな感じかなとCDをトレ イ
に入れると、1曲目の1分ほどのネヴァー・レット・ミー・ゴーから、2曲目のハー ドな
オリジナルに突入。そして目が覚める。鋭いピアノのフレージングと言ってもいいの か、
あるいはクラシックの修行時代が長かったからこうなったのか、まあタダモノではな いと
思いました。しばらく、この曲を繰り返し聴く。スピーディーでメロディアスなテー マの
8曲目もなかなか。本当ならこういう路線で行って欲しかったのですが、叙情路線の 曲の
方が多いです。静かながら映像的にせまってくる6曲目、耽美的で都会的なクールさ とを
あわせ持って、フツフツと情感がわいてくる7曲目、しっとりとしたバラードの9曲 目。
 3曲目はビョークの曲で、哀愁感覚が何とも言えない雰囲気。4曲目はスタンダー ドを
自然体で。5曲目はミシェル・ルグランの曲。しっとり感が良い感じ。特に後半のピ アノ・
ソロがジーンときました。10曲目は有名ですがその色彩感は淡く、渋い。そして、 1曲
目をフル・ヴァージョンにした11曲目で静かに幕を閉じます。
 プロデュースの関係か、控えめな演奏が多いですが、バップのフレーズが出て来な いで
メロディアスな独自路線で勝負をしているなあ、という気もしています。なぜか視覚 的に
映像が浮かび上がるような音。彼女のピアノならばジャズファン以外にももっと広く 受け
入れられそう。ベースとドラムスも意外な取り合わせですが、でしゃばる事なく、全 体的
にうまくまとまっています。ただ、曲もフレーズもあまり「ジャズ」らしさがない統 制の
とれたサウンドなので、好みの問題はあるかもしれません。澤野工房での叙情的な一 部の
アルバムに近いような感触がありますが、甘口でもないと思います。

評点:★★★★(四つ星)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)


「意外に硬派な女性ピアニスト」

 日本人の女性ピアニストというと大西順子や木住野佳子が思い浮かぶのだが、
このアキコ・グレースなるピアニストは大西ほどパワフルでもなく、木住野ほど
わかりやすくもないという感じで、やや中途半端な印象を受けた。自作の2や8
あたりの疾走感はなかなか心地よいが、その他は抽象的なミドルテンポの演奏が
大半を占めておりアルバムとしては退屈なものに感じられてしまう。個々の曲の
出来は悪くないと思うが。初心者には少々とっつきにくい作品かもしれないが、
最近のGDに氾濫する有名曲やスタンダードを適当に料理して並べただけという
所謂商売アルバムにはなっていないと思う。そこは評価したい。

評点:★★★☆(三つ星半)

増間 伸一
Masuma's WebSite増間 伸一さん)


「ネオ・スタンダードのヒロイン」

何の予備知識もなく最初に耳に残ったのが#3 I've Seen It All 。
不勉強でこれがビョークの曲だと言うことは、CDを聴きながらSJ
誌を読んでいて気が付いた次第ですが、若干の力みは感じられ
るものの、アルバム全体を通してもハイライトだなと思いました。

そう思って改めて聞き直しましたが、やはり耳馴染んだスタンダー
ドよりも、良くできたオリジナル曲よりも印象は強烈です。オリジナ
ルの中では腰の入ったバネのある#8 Inner Conflict が変幻自在
の構成で一番力強く感じました。

録音のせいもあるのか鍵盤を強打する部分でブライト過ぎるのが
気になりましたけど、ピアノをこんなに明るく堅めに録音した作品
も私は久しぶりです。次回はもっとナチュラルに録ってもいいように
感じました。

今後の期待は是非ネオ・スタンダーにチャレンジして欲しいです。
"Akikoがやってたあの曲"なんて言われるようになればしめたもの
です。実力の伴った期待度大の新人ですね。

評点:★★★★(四つ星)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「イメージを裏切る硬派なピアノ」

 失礼ながらダサいジャケがサヴォイの特徴かと思っていたら、
本作のアイドル顔負けの美しいアートワークに驚かされました。
何しろ本当に間違えて買いそうになったお客様がいるほどです。
ところが見ると聴くでは大違い、BGM風の作品かという先入観
をいきなりそのタッチの力強さに覆されました。
さすがにグレースの芸名通りに、パワーだけでなく気品を漂わす
プレイが聴かれます。やはりクラシックのバックグラウンドがある
からなのでしょう。それが日本人らしい生真面目さとともに緊張感
を強いる面も否定できません。そのあたりが好みの分かれるとこ
ろでしょうが、個人的にはこの方向性で個性を確立してもらいたい
と思います。

評点:★★★★(四つ星)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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