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2001年10月 第36回作品

ラヴ・レターズ/マンハッタン・トリニティ

2001年10月17日発売  エムアンドアイカンパニー MYCJ−30121 税込み¥2,800

マンハッタン・トリニティ

1.LOVE LETTERS
2.DJANGO
3.TAXI DRIVER THEME
4.NTB
5.SO MANY STARS
6.TILL THERE WAS YOU
7.WISTERIA
8.EBB TIDE
9.BLAME IT ON MY YOUTH
10.9:45 AM

Cyrus Chestnut(p)
George Mraz(b)
Lewis Nash(ds)


「メロディアスなアルバムではあるけれど」

 まず、アルバムを聴いてみる。メロディアスで素直なジャズという印象があり
ます。演奏はそれなりに素晴らしいし、これはこれで良いのですが、数回聴いて
みて残った印象というと、はて何だったっけ、という感じが無きにしもあらず。
スタンダードや映画音楽、ジャズメン・オリジナルに、彼らトリオのメンバーの
オリジナルが1曲ずつと、曲の構成も変化に富んでいます。ただ私が欲しいなあ、
と思うのは、彼らのもっと個性的な演奏。それと、ジャズの屈折した部分や影。
こういうものが希薄なのかなあ、という気もしています。自分の価値観をミュー
ジシャンに押し付けるのは酷だと思うので、こういう時はアルバムに入っている
3曲のオリジナルに目がいきます。リズミカルかつダイナミックにせまってくる
ルイス・ナッシュ作の4曲目、静かに複雑なメロディで浮遊感が漂うジョージ・
ムラーツ作の7曲目、ノリは良いけれど少々複雑な構造を持つサイラス・チェス
ナット作の10曲目。おお、この3曲はけっこう個性的ではないですか。どうせ
ならオリジナルをもっと増やしても、と思います。
 メロディのきれいな曲がちりばめられているので、その方面のピアノトリオが
好きな方にはけっこう良いかもしれません。ただ、私にはもう少し後に残る何か
が欲しい、という点では食い足りなさが残ってしまいました。

評点:★★★☆(三つ星半)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)


「個性で勝負する時期かも」

このアルバムのライナーに書かれていた中条晋平氏の言葉に、
今回の作品の主役であるチェスナットをここまでにしたのは、彼に
世界デビューとなったリーダー作品を作るチャンスを与えた日本の
レコード会社であること、またそれは日本の誇りだと書いてありま
した。

確かに最初にその機会がなければ彼がこのように世界的に有名
な存在になりコンスタントにアルバムをリリースすることはなかった
かも知れません。今回のアルバムを含め今までの路線が、チェス
ナット自身が本気でやってみたかった作品群であり、それで成功
したことを祈るばかりです。でもこのアルバムに限っていうとどこに
もチェスナットの顔が見えてきません。

もし今度日本側で彼にアルバム制作の機会を与えるなら、最初に
作品のイメージやターゲットを提示せず、全部好きにやらせてみて
欲しいです。一体彼から何が出てくるか、何かを生み出してこその
ジャズだと思いますので是非そこにチャレンジしてみて欲しいなと
感じます。そうすれば日本はもっと世界に誇れると思います。

今回の作品自体はお洒落路線のジャズとして良く出来ていると
思いましたが、GDマークが恥ずかしいような気もしました。

評点:★★★☆(三つ星半)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「ラウンジ・ミッドナイト」

本作はM&I第2作。初のトリオ作。彼等の自作が1曲ずつで、7曲はスタンダードに
偏らない多彩な選曲です。ところが、後者がいけません。ゆったりした曲が多く
工夫が足りないものですから、夜更けのラウンジ・ピアノの様相を呈してきます。
快活なタイトル曲やNash作の好印象がそがれます。近頃の軟派のトリオ・ファン
向きでしょう。久々に本領を垣間見せたタイトル曲に免じて半星おまけです。

評点:★★★(三つ星)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「メンバーの本気が伝わってこない」

 自己のリーダー作で既に評価と地位を確立しているにも関わらず、企画物や臨時
ユニット、プロジェクトでその評価を下げてしまうのは良くあることだが、本作の
チェスナットもそれに近いのではないか。そもそもトリオによる快作を何枚も発表
しているチェスナットがユニット名義でトリオ作をリリースすることに何の意味が
あるというのだろう。目先を変えて売り込もうとするレコード会社の浅はかな商魂
が垣間見えてほとほと嫌になる。
 とはいえ一流のメンバーによる演奏だけにクオリティ自体は低くない。BGMと
割り切ってしまえば心地よいピアノトリオだし、ナッシュのペンによる4のように
ハードな曲もあり聴かせどころがないわけではない。ただそのナッシュが大人しい
演奏に終始しているためか結果として全体的に盛り上がりに欠けるし、メンバーが
全力を出し切って本気でプレイしている感じがしないのだ。
 これならチェスナットのリーダーアルバムを聴く方がよっぽど有益だと思う。

評点:★★★(三つ星)

増間 伸一
Masuma's WebSite増間 伸一さん)


「期待が過剰だったか」

 ズバリ耳に優しく聴きやすいアルバムです。
快調なタイトル曲からスタートして最後10曲目の自作曲まで、全く安心して
身を委ねることが出来ます。まあこのメンバーなら当然のことでしょう。
これが未知のミュージシャンの演奏であれば、絶賛しているところです。
しかし三人ともまさに脂ののりきった売れっ子中の売れっ子揃い、こちらの
要求が高くなるのもやむを得ないでしょう。演奏自体にこれといった不満が
あるわけではないのですが、もう一つガツンとくる物が欲しいのです。
こちらに伝わってくる明瞭なコンセプトがあれば、もっと体内に染み込んで
印象深い作品になったでしょう。タイトル曲の他はメンバー自作曲の方が
生き生きとした演奏に思えたので、オリジナル主体の方が良かったかも..

評点:★★★☆(三つ星半)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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