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2001年9月 第35回作品

フライド・プライド

2001年9月21日発売  ビクターエンタテイメント(Concord) VICJ−60820 税込み¥3,045

フライド・プライド

1.Love for Sale
2.If
3.Lately
4.L' Ame Des Poetes (詩人の魂)
5.The Man I Love
6.Morning Must Come
7.Louisiana Sunday Afternoon
8.’S Wonderful
9.Jumpin’ Jack Flash
10.Calling You
11.Paradise

SHIHO(vocal)
Akio Yokota(guitar)


「痛快かつ爽快な歌もの」

記憶では何となくジャズ・ヴォーカルというものを別の目で、というか
別の耳で聴くようになったのは、ホリー・コールやハリー・コニックJr.
がシーンに登場した頃だったと思います。今回新たに登場したフライ
ド・プライドを聴いたとき、そんな記憶が蘇ってきました。従来の形式
にとらわれず自分たちのやりたいスタイルでやって、それをジャズに
してしまうには根底にかなりの技術とセンスを要すると思うのですが
その点はこの二人の場合軽くクリアしています。

ジャズファンでなくともおなじみの曲が多いのは、恐らく二人に共通し
てやってみたかった素材なんだと思いますが、ここでは何の無理もな
く素直に歌い切っていて清々しいものを感じました。曲によってストリ
ングスがやや絡みすぎでそれだけが不満として残りましたけど、こと
二人の歌と演奏に関しては何らの文句の付けようがありません。

日本からもこのようなユニットが登場したことを何となく誇りに思える
そんな作品でした。CDだけでは勿体ないので、ミュージック・フェアの
ような番組にどんどん出演して、多くの人に本当の音楽の楽しさを
伝えて欲しいなと感じました。個々の曲について書くより彼らの存在
そのものが日本の音楽シーンの未来を明るくする、その手応え充分
だということを強調したいです。一部の過剰なストリングスがなければ
五つ星!

評点:★★★★☆ (四つ星半)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「上質のポップス盤に似た愉しさに溢れる快唱集」

本作はConcord第1作。パーカッション、2曲にセロ、2曲に弦楽四重奏団が加わる。
容姿も声質も妖精系だが歌唱は非凡。快活なファスト、ソウルフルなミディアム、
繊細なバラードと、何れも魅力的だ。スタンダード、ポップス、自作と多彩だが、
「何を歌っても巧い」人で、何よりも立派に彼女の歌になっている。横田の強力で
壷を押えたサポートも聞き物だ。ヴォーカル一般のファンなら聴き逃せまい。

評点:★★★★(四つ星)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「ジャズを飛び越えたユニット」

 インパクト、という言葉があります。このユニットの1曲目を聴いたとたん、
この文字が浮かびました。超絶技巧のギターと、ヴォーカルの2人組。シンプル
な編成で、けっこうスリリングな演奏を展開しています。ギターの間奏部分や、
ヴォーカルのスキャットする部分など、魅力的。この曲で決まりかな。
 曲によってパーカッションが加わったり、チェロや弦楽四重奏団が加わったり、
変わった編成の録音ですが、かえってこの編成がこのアルバムの印象を強くした、
と言えます。2−3、9−10曲目あたりはポップスや映画音楽がルーツの曲。
特にジャズにこだわっていない姿勢が今っぽくていい感じ。素直にヴォーカルと
して聴けます。これに対して4−5曲目などのジャズの曲は、ギターもけっこう
前面に出ているし、8曲目のヴォーカルのスキャットもけっこうスゴいかも。6、
11曲目はオリジナル。不思議と他の曲とマッチしています。
 アルバム全体の雰囲気から、ジャズと真っ向から勝負している、というよりは
ジャズにこだわっていない、あるいは飛び越えてしまっている、という感じです。
もちろんジャズスピリットもけっこうあるように思いますけれど。たぶん既成の
概念に捕らわれていないリスナーの方が、好感度が高いのではないかな。9曲目
のローリング・ストーンズの曲なんてノリが最高。私はこれ、好きです。10−
11曲目あたりはシットリ感も。先入観なしに聴きたいアルバム。

評点:★★★★☆(四つ星半)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)


「新世代の邦人デュオ」

 今回は私が大の苦手とするジャズボーカル。女性ボーカルとギタリストによる
日本人デュオだが、良いのか悪いのかさっぱりわからない。ボーカルはハスキー
ボイスが個性的だ。ギターはアコースティックでしっとりとした印象を与える。
ただどの曲を聴いてもあんまり面白くないし、せっかくスティービー・ワンダー
やローリング・ストーンズの曲を取り上げているのに、原曲の良さが活かされて
いるとは思えない。8などで聴かせるスキャットも、先達の物まねの域を脱して
いないという印象が残るし、後ろでチャカポコと鳴るパーカッションははっきり
言って耳障りでさえある。スローテンポでじっくりと仕上げたナンバーのほうが
出来が良く、思い切って全編そんな雰囲気でまとめてしまったほうがこれからの
季節にピッタリのアルバムになったのでは、と思う。
 いずれにしても初物好きのジャズボーカルファンならともかく、私にとっては
3000円も出して買う価値はないアルバムであった。

評点:★★★(三つ星)

増間 伸一
Masuma's WebSite増間 伸一さん)


「日本ジャズの意識改革」

 まずはヴォーカルとギターのデュオというユニットの存在に驚きました。
保守派?の私でも認めざるを得ない説得力を持っています。
まったくごまかしの利かない編成で、自分たちのやりたいことを伸び伸びと
表現しているではないですか。それはジャケットに象徴されるように従来の
ジャズという枠を軽々と乗り越えてしまったようです。
先頃Verveからデビューしたakikoとかこのフライド・プライドを
聴いていると、アメリカに追いつこうと必死に努力していた世代の音楽とは
まるっきり出発点が違うのだと思わざるを得ません。
 これからはテレビ番組等にも引っ張り出されることでしょうが、一般の
音楽ファンがジャズに興味を持つきっかけとなってくれれば幸いです。

評点:★★★★(四つ星)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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