2000年10月 第25回作品
ノー・ルーム・フォー・アーギュメント/ウォレス・ルーニー
2000年10月25日発売 ユニバーサルミュージック(STRETCH) 税込み¥2,548
NO ROOM FOR ARGUMENT
1.NO ROOM FOR ARGUMENT
2.HOMAGE&ACKNOWLEDGEMENT(LOVE SUPREME/KILLIMANJARO)
3.STRAIGHT NO NOTHING
4.METROPOLIS
5.CHRISTINA
6.NEUBEINGS
7.CYGROOVE
8.HE WHO KNOWS
9.DMSR/VIRTUAL CHOCOLATE CHERRY
10.MIDNIGHT BLUE
11.PORTIA (日本盤のみのボーナス・トラック)
ウォレス・ルーニー(tp)
スティーヴ・ホール(ts、ss、bcl)
アントワン・ルーニー(ts、ss、bcl)
ジェリ・アレン(p,el-p,synth)
アダム・ホルツマン(el-p,org,synth)
バスター・ウィリアムス(b)
レニー・ホワイト(ds)
ヴァル・ゲルダー・ジーンティー(samples&electronia)
「遂に来た!」
「遂に来た!」デビュー当時からウォレスの音楽を追いかけてきた方ならば、
この感覚がおわかりいただけると思う。これまでのリーダー作も新主流派路線を
ベースとした優れた作品ばかりであったが、ここ数作は息苦しさや中途半端さを
感じたのも事実だ。しかしメジャーレーベルの足枷が外れた本作品ではウォレス
自身が本当にやりたい音楽を一気に炸裂させている。70年代マイルスの音楽を
踏襲しながら、モーダルな60年代(4)、リリカルな50年代(5)、コンテンポラリー
な80年代(9)までフォローする。マイルスという歴史の上を軽やかに行き来する
ウォレスが実に活き活きとしている。
恐らくこのアルバムを聴いて"マイルスのコピー"或いは"マイルスの物まね"と
評する人もいるだろう。しかし単なるコピーや物まねのレベルではここまで充実
したアルバムにはならないはずだ。これはマイルスの意志を受け継いだウォレス
自身の音楽として立派に成立していると思う。共演者たちもそんなウォレスに
力の限りのプレイで応えている。
無論、本作が完全無欠のアルバムというつもりはない。70分を超える長丁場の
中、ダレる部分もある。しかしそんなネガティブな要素を吹き飛ばす程のパワーを
持ったアルバムなのだ。
本音は5星だが、今後更なる傑作を生み出すことを期待して半星減じておく。
ウォレス・ルーニーという存在を再認識させるに十分な記念碑的力作である。
評点:★★★★☆(四つ星半)
増間 伸一
(
Masuma's Homepage
増間 伸一さん)
「ミレニアム版ビッチェズ・ブリューなのか」
マイルスの全時代を大好きな私はルーニーをどう自分の中で
位置づけるかがまず難題のひとつでした。今回のアルバムも
至る所でマイルスがまだ生きてたのかみたいな、瓜二つの
音がぽんぽん飛び出します。しかも音が似てるだけでなくフ
レーズの組み立てまでが生き写しで、どうしてもルーニーの
顔が見えてこないのです。69年当時レニー・ホワイトやチック・
コリアとやってた頃のマイルスの未発表テイク集かと思ってし
まいそうな曲から「死刑台のエレベーター」を思わせる曲まで
もしかしたらルーニー自身、マイルスになりきって吹いている
のかも知れません。確信犯的にやってるのだとしたらそれは
大成功だと思うのですが、プロのミュージシャンが例えそれが
偉大な存在であってもその生まれ変わりを演じることに疑問
を感じてしまいました。アルバムの一曲だけそういうのがある
とか、そいうのなら気持ちも判るのですが。
さらにそれらの曲がマイルス程には惹き付けられる彩や華に
はちょっと乏しい感じがするのが余計寂しさを助長します。
次作ではルーニー自身の顔を見せて欲しいと願うばかりです。
評点:★★★(星三つ)
白岩輝茂
(
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】
白岩輝茂さん)
「それでも昔懐かしいアルバムか」
実は家族でこのアルバムを聴く機会があって、2曲目の、ウォレス・ルーニー
がギリギリのテンションのところで発する第一声を、うちの奥さんは、「この人、
トランペット音痴?」ですと。大爆笑でした。個々のミュージシャンのソロだけ
を聴くと、けっこう皆鋭いものを持っていて、文句なしかな、とは思います。
完全なラップの曲ではないにしても、1曲目は今ふうのサウンドなので期待は
高まります。2曲目は、一発もののリズムの上に複雑なハーモニーがかぶさって
いい感じ。3曲目も自由度の高い演奏。ただセルフ・プロデュースということも
あってか、4−5曲目は時代がさかのぼるので焦点が絞り込めず、余計だったん
ではないかとの印象。その曲のみ聴くと良いのですが。6曲目は複雑なテーマで
すが、変化に富んでいてノッています。ドコドコいうビートが心地よい7曲目、
リズミカルで進行の印象的な9曲目。8曲目も渋いところを見せてくれます。
奥の方でドコドコと鳴っているドラムスを前面に出して、どうだ、ミレニアム
ファンクで勝負するぜ、という部分も欲しいかなあと。それでも類似のサウンド
を演出しているアルバムが今の時代あまりないので、そういう意味では貴重かも。
本来ラストの10曲目が美しく響いてきます。こういう曲はなかなかいいです。
11曲目のボーナス・トラックは、ラストゆえ少々バランスを崩しているような
気も。
どうだ、マイルスという言葉を使わないで書いてみました、と思ったらここで
出てきてしまった。というくらい影響はあるんだろうな、やっぱり。マイルスも
ウォレスもひと通り聴いてきましたが、そういう知識をなくしたところで聴こう
と思っても、できなかったところが反省点。全体としてはもう少し焦点を絞った
方が良かったと思います。
評点:★★★★(星四つ)
工藤 一幸
(
ジャズCDの個人ページ
工藤一幸さん)
「四十にして立つも惑いあり」
本作はStretch第1作。ついにエレクトリック路線。これまでの路線ならともかく、
クリエイターとしての確たるヴィジョンなくして出来やしない。四十にして立つ、
結構ではないかと思いきや、後期黄金のクインテットを想わせる演奏が混在する。
志が高いのか低いのか解らん。これだから誰かに引き寄せて語られることになる。
尤も、前者にしても斬新度は低く、これを21世紀のジャズといわれても困る。
評点:★★★3/4(三つ星四分の三)
林 建紀
(
JAZZ DISC SELECTION
林 建紀さん)
「大いなる意欲作ではあるが...」
電化マイルスや新主流派が苦手な私にとって、かなり手強い作品でした。
まずラップ風の呪文?に馴染めず、緊張感を強いる曲が続く展開に思わず
身構えてしまいました。4曲目でようやくオーソドックスな曲想に出会い、
だんだんと体内に音楽が入り込んできました。6はオルガンやバスクラが
実に効果的に入り、多彩な音色で飽きさせません。後半はメロディーの
美しい曲ばかりで、トランペットのリリカルな表現が聴けました。
ただ77分という長さに聴き手の集中力が持続しない面もありそうです。
曲単位ではそれぞれかなり魅力的なのですが、全体を通して聴いたときの
印象が今ひとつなのは、その辺に問題があるのではないでしょうか。
評点:★★★☆(三つ星半)
STEP 片桐俊英
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制作者:片桐俊英 メールは
ste p@awa.or.jp
までお願いします
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