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2000年9月 第24回作品

プレイシズ/ブラッド・メルドー

2000年9月13日発売 ワーナーミュージック・ジャパン(WarnerBros.) WPCR 10785  税込み¥2,520

ブラッド・メルドー

places

1.Los Angels
2.29 Palms
3.Madrid
4.Amsterdam
5.Los Angels II
6.West Hartford
7.Airpoint Sadness
8.Perugia
9.A Walk In The Park
10.Paris
11.Schloss Elmau
12.Am Zauberberg
13.Los Angels(Reprise)

ブラッド・メルドー(p)
ラリー・グラナディアー(b)
ホセ・ロッシー(ds)


「アルバム構成の勝利」

ソロとトリオでの演奏をほぼ半々に、交互に収録したのには
そこに意図があったからと思いますが、ソロが前菜でトリオが
メインディッシュというように感じ取れました。
クラシックでいうところの前奏曲的な楽想をもつソロ・チューンが
それに続くトリオ物をより際だたせているように思えたのです。

あるいはトリオでこそ、あるいはソロでこそ表現できるものを
交互にリスナーに聞かせることで各々の表現しているものの
輪郭をはっきりさせようとしたとも考えられますが、いずれにしても
このアルバムが彼の既発作品を超えて代表作品となる予感が
しました。全曲彼のオリジナルのようですが無駄な曲がひとつも
なく、日本盤にありがちな安易なボーナス・トラックを収録していない
こともアルバムの完成度を高めたという気がします。

彼にとっては通過点の一作かも知れませんが、10年後も20年後も
記憶に留まっているアルバムだと思いました。

評点:★★★★☆(星四つ半)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「独自の道を突き進むピアニスト」

 ブラッド・メルドーの初リーダー作を聴いた時、「なかなか凄い若手が出てきた
な」と感心した記憶があるが、その後のリーダー作を数枚聴くにつれ徐々に興味が
無くなってしまった。独自の個性を確立していく代わりに、明快なわかりやすさや
スイング感が失われていったように感じたからだ。前回のチャールズ・ロイド盤や
ジョシュア・レッドマンの「Moodswing」などサイドメンとしてのメルドーは好きな の
だが、リーダー作にはあまり面白みを感じない。
 本作も決して難解な作品などではないが、気軽に聴けるような代物とも思えない。
曲も演奏も非常に美しく立派で感心させられるがどれも同じように聴こえてしまう
のが残念。アルバムとしてのイメージ統一は出来ているということだろう。全体的
にはヨーロッパ的で各曲のタイトルにも合っている。その中ではトリオなら (3)(11)、
ソロでは(2)が明るい曲想で好印象。ポール・ブレイのような妖しさも身に付けて
きたようである。ソロよりはトリオの曲の方が良い。
 とはいえ個人的にこういうアルバムはちょっと苦手だ。スタンダードなどもう少し
やってくれると嬉しいのだが。この先メルドーはどうなっていくのだろうか...

評点:★★★☆(三つ星半)

増間 伸一
Masuma's Homepage増間 伸一さん)


「進化していくスタイル」

 ブラッド・メルドーが旅の印象を曲に託したオリジナル曲集とのこと。ソロの
演奏が7曲と、トリオでの演奏が6曲、だいたい交互に展開していきます。以前
から、スゴいピアニストが現れたものだと思っていました。左手が、タダ者では
ありません。特にソロピアノの時に遠慮会釈なく左手が爆裂することがあるよう
です。左右バラバラにメロディやアルペジオが展開し、ハーモニーやメロディが
融合していくのは見事。2曲目の5拍子や5曲目の8分の7拍子など、変拍子の
曲もありますが、実は拍子をカウントできなかったところも多く、曲作りは複雑。
クラシックの影響もあえて隠そうとせず独自路線を歩んでいます。静かで綺麗な
メロディのバラードである7曲目もいい。5、8、10曲目なども、その情感が
聴く者の心の襞を捉えて離さない魅力があります。情念のほとばしり?そうかも
知れない。頭で聴く要素は大きいですが、その切れ込みはけっこう鋭い。そして
印象に残るメロディの部分も。
 比較的気楽な雰囲気で聴けるトリオの演奏もいいですけれど、ソロピアノの方
が個人的には好み。オーソドックスな4ビートのアルバムではないので、聴く人
をある程度選ぶのでは。賛否両論はあるとしても、ハズせない今年の1枚になる
のではないかな、という気がしています。いずれにしても現代ジャズの最先端の
ひとつを彼、あるいは彼らが歩いていることには違いないと思います。

評点:★★★★☆(星四つ半)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)

 

「第一級のコンセプト作ではある」

本作は第7作。"Art of the Trio"は外れた。世界各地の印象を綴るコンセプトと
ソロを交えた構成ゆえだろう。コンセプトに沿った見事な統一感を示す。一方で
同工異曲の観も否めない。前人未到のピアニズムはソロでより明確に示されるが、
学究的でヨーロッパ臭ないしクラシック臭が勝る。圧倒的な躍動感を期待すべき
作品ではないのは承知しつつも欲求不満は募る。完成度5ツ星、感動度3ツ星。

評点:★★★★(四つ星)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)



「メルドーは一日にして成らず」

 今回は発売日と締め切りの関係で相当何度も聴きました。
しかし回数を聴いてもなかなか印象が定まらず、筆が進みませんでした。
またその間、雑誌や新聞に至るまでアルバム評が沢山載っていました。
そのどれもがテクニックの素晴らしさや斬新さを称えています。
さりげなく挿入されるスタンダードの一節や、腕が3本あるような
ソロなど、たしかに才気溢れる演奏と言えるでしょう。
ジャズとかクラシックとかの枠を越え、独自の世界を築いている
のだからたいしたものです。途中でやや退屈な感じがしたソロも
最後の12曲目では多彩な表現で飽きさせません。
ただ私が個人的に今一つ満足できないのは、キースのスタンダーズ
には感じるカタルシスがないことです。
従来のありがちな展開を拒否した結果なのか、こちらの聞き込みが
浅いのか、秋の夜長の宿題となりました。

評点:★★★★(四つ星)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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