新名盤

2002年6月11日

 第3回

dam Kowalewski "Les Moulins de Mon Coeur"
         ( Not Two recorded Sep.10,11,12.2001)

Piotr wylezol (p) Adam Kowalewski (b) Lukasz Zyta (ds)

1.Dedicatin
2.Les Moulins de mon Coeur
3.Minsk
4.Euko
5.When I see you
6.Barrel-organ
7.Yearnibd
8.Dancing with Vooco


「スラヴ系叙情美を湛えた新生ピアノ・トリオ」

 邦題は「風のささやき」です。このタイトル曲はミッシェル・ルグランのもの
です。コヴァレフスキーはベイシストでこのトリオはポーランドの新生ピアノ
・トリオです。全編スラヴ系の雰囲気を持つ盤と言って良いでしょう。
アルトゥール・サンドバルの"My passion for the piano"が今度6月に発売
され、その中にも「風のささやき」が入っています。英語では"Windmils of
your mind"という題名で知られています。こちらはラテン・ジャズがメインなんで
すが、コヴァレフスキーの方はスラヴ系ジャズ。面白い対照です。その中
に同じ曲が入っているのですからいったいどういう解釈になるのか興味
津々です。
 さてこの盤は何度も言いますが、スラヴ系ジャズ。シンプル・アコースティ
ック・トリオの世界に通じるコメダ的ロマンティズム。何度か聴きなおして
みると西欧ジャズにも近接している雰囲気もあります。まあ西欧だ東欧だ
と言うことは抜きにしてもロマンティズムに酔うことは間違いなしの盤です。
しかし甘さに頼らないリリカルな美旋律に包まれます。程良い渋みも
兼ね備えた味でしょうか。7曲目ではたとこれはキース・ジャレットの世界
ではないかと。

菅野 寛

Baker's Holidayへようこそ! 菅野寛さん)

 フットプリンツ〜ベスト・ライヴ!/ウェイン・ショーター
      (Verve)国内盤は5月9日発売

Footprints Live!/Wayne Shorter(Verve) - Recorded July 14, 20, and 24, 2001.

Wayne Shorter(Ss, Ts), Danilo Perez(P), John Patitucci(B), Brian Blade(Ds)

1. Sanctuary
2. Masquelero
3. Valse Triste
4. Go
5. Aung San Suu Kyi
6. Footprints
7. Atlantis
8. Juju
9. Chief Crazy Horse


「ショーター流のアコースティック表現」

 寡作なウェイン・ショーターが今度はどんなCDを出してくれるかと思ったら、
アコースティックなクァルテットで、昔彼が演奏した曲ばかりを再演しています。
3曲目を除き彼のオリジナル。メンバーも強力で、しかもライヴ録音。
 聴き覚えのあるメロディのテーマが多く、うれしいところです。ただし、ここ
では過去のテーマは持ってきたのだけれども、あくまでも「現在」の音を彼らは
発しているのだ、ということを感じ取る事ができます。ショーターのサックスは
内側へ向いているような、何となく発散しないサウンド。ストレートでないので、
聴く人を少々選ぶのでは、という気もしますが、ハマるとコワい部分かも。どこ
を切っても、バップフレーズを使っていない独自のフレーズ。あたりまえですが、
そこがスゴいところ。
 自由度が高めの演奏で、メンバー間の丁丁発止の反応も楽しみ。抑制が効いて
統制のとれている場面もあったり盛り上がる場面もあります。このサウンドも、
強力なメンバーならではの微妙なバランスの上に成り立っています。個人的には、
6曲目のタイトル曲や8曲目あたりが印象的でした。ただ、曲ごとに聴くのでは
なく、アルバムの最初から最後までをひとつのドラマとして、じっくりと聴いて
いく方が正しいのではないか、という気もします。
 聴かせどころは随所に出てくると思うのですが、シンプルに4ビートでノレる
というジャズではないので、誰もが聴きやすいアルバムではないかもしれません。
やはり現代ジャズのあるべき姿とこれからあるべき方向のひとつとして、もっと
注目されるべきではないのかな、と思います。

工藤 一幸

ジャズCDの個人ページ 工藤一幸さん)  

 

 
Donald Harrison / Real Life Stories

2002年新譜 Nagel Heyer 2022 (Germany)
2001年2月 N.Y.吹き込み


Donald Harrison (as)
Christian Scott (tp)
Eric Reed (p)
Jonathan Lefcoski (p. on 4&5)
Vicente Archer (b)
John Lamkin (ds)


「妖しさに負けた」

以前からかなりニューオリンズにこだわった作風が個性になっていた
ドナルド・ハリソンですが、最近は自ら名付けたヌーヴォー・スイングと
いうスタイルで足場を固めようとしているようです。ここでも意外なくらい
形が変化した #5. A Night in Tunisia、#7. Take Five に彼のチャレンジ
精神を見ました。新しいことをやっているという気負いや派手さはなく
全く不思議なタイム感、全体のノリも妖しく、あたかも未踏の獣道を行く
感じでスリリングです。ジャズでこのような初体験気分を味わうのは
久しぶりです。共演のエリック・リードのピアノも腰のある音がGood。
ヌーヴォー・スイング、新しいスタイルとして是非確立して欲しいです。

白岩 輝茂

【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩 輝茂さん)

 

Tokyo Zawinul Bach / Cool Cluster
(01.9-02.2 Body Electric)


「感性の再構築を迫られる衝撃作」

 東京ザヴィヌルバッハは坪口昌恭(key,Mac)、菊池成孔(sax,CDJ)。99年頃から
先端好みの間では評判となっていたユニットだ。気にはなっていたが、ライヴに
行ったわけでもなく、自主制作盤を買ったわけでもなく、ようやく初めて聴いた。
恐るべし。未知との遭遇にうち震えた。これほどのユニットなのに、日本の大手
レコード会社とジャーナリズムが無視を決めこんでいるとは実に嘆かわしい。

本作はBody Electric第1作。"Procession"(Joe Zawinul)を除く6曲がオリジナル。
Gen Ogimi(per)、Nobuo Fujii(ds for sampling)が加わる。この音楽を紹介する
筆力が私にはない。めくるめくサウンド・コラージュ!というのも陳腐に思える。
要するに私には未知なのだ。シーケンサー・ソフトは道具の域をこえて、彼等と
インタープレイしているような感すら抱かせる。そこに妙なズレが生じることで
異なグルーヴが生じる。奇を衒っているわけじゃないことは聴けばわかることだ。
キャッチーな曲想、タイトな構成、アブストラクトな刺激が共存、磁力が渦巻く。
未知の空間に拉致される不安が期待に変わり感性の再構築を迫られる衝撃作。

林 建紀

JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)

 

アイ・キャン・シー・フォーエヴァー/ハリー・アレン

  2002年5月22日発売
  BVCJ 34019(BMGファンハウス)
  ¥2,835(税込)

 ハリー・アレン  (ts)
 ギレルメ・モンテイロ (g)
 ジェイ・バーリナー  (g)
 ロン・カーター    (b)
 グラディ・テイト   (ds)
 ジョー・アシオーネ   (per)
 深津純子    (fl)

 1.Wave  波
 2.So Many Stars
 3.The Telephone Song
 4.O Grande Amor
 5.I Can See Forever
 6.Manha Do Carnaval(Orfeu Negro)  黒いオルフェ
 7.Ela E Carioca  彼女はカリオカ
 8.A Time For Love  恋のひととき
 9.Be Careful、It’s My Heart
10.A Felicidade
11.And I Love Her
12.The Summer Knows  おもいでの夏


「夏の昼寝に最適のボッサ」

ゴールドディスクです、しかもロン・カーター参加。普通なら自腹を切って
聴くようなアルバムではないのですが、今回はフルートの深津さんが4曲
参加ということで早速CDプレーヤーにセットしました。1曲目の冒頭から
聞き覚えのあるフルートが流れ、それに続いてハリー・アレンの優しげな
サックスが心地よいメロディーを奏でます。そしてハッと気がつくとCDは
もうラストの曲「おもいでの夏」になっていました。何曲目まで聴いたのか
ハッキリしませんが、途中からウトウトと居眠りをしていたようです。そして
翌日二度目のチャレンジも、また途中で意識不明となってしまいました。
しかしそれは決して演奏が退屈だからではなく、心身をリラックスさせる
安心感に満ちているからのことです。小難しいことは抜きに寛ぎの調べに
身を任せてこそ、この作品は楽しめると言えるでしょう。
ゲッツ=ジルベルトは聞き飽きたというあなた、是非聴いてください。

片桐 俊英

 



  制作者:片桐俊英  メールはstep@awa.or.jpまでお願いします

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