GD看板



1998年11月 第5回作品

ユナイテッド/椎名豊

1998/11/21発売 BMGジャパン(NOVUSJ)  BVCJ 31005  税込み¥2,548

1.PENT−UP HOUSE(Sonny Rollins)
2.INNER FLAME(Yutaka Shiina)
3.IONDIGO BLUE(Yutaka Shiina)
4.A FOGGY DAY(Ira&George Gershwin)
5.CRISSCROSS(Thelonious Monk)
6.REMINISCENCE (Yutaka Shiina)
7.GIANT STEPS(John Coltrane)
8.APRIL IN PARIS(E.Y.Harburg-Vernon Duke)
9.TRISTEP (Yutaka Shiina)

Yutaka Shiina−piano
Christian McBride−bass
Clarence Penn−drums



「ピアノ・トリオの王道を行く中傑作」

 今月も素晴らしい。筆者の知らないところで凄い人達が育っていたのだなぁー。
1曲として凡演がない。勢い(‡@‡F)、緊張感(‡A‡D‡H)、うねり(‡B)、小気味よい
スイング感(‡C‡G)、優しさ(‡E)等、ピアノ・トリオを聴く歓びを充たしてくれる。
気合は入っているが力は入っていない。無駄フレイズは見られないし観念性とも
無縁だ。心の赴くまま弾いた伸びやかさを感じさせる。オリジナルは勿論のこと、
いつか聴いたようなスタンダード(‡C‡G)も異彩を放ち、ジャズメン・オリジナル
(‡@‡D‡F)もオリジナルと同じレベルまで昇華している。ピアノ・トリオの伝統を
踏まえつつ独自の表現を獲得しているからだ。あえて注文すれば、世界の小さな
プレイが散見されることで、大きなうねりで聴かせる場面がもっと欲しい。また、
Pennは黒豹の俊敏性と獰猛性を備えたドラマーだと思ったが、些か切れ味が鈍い。
ともあれ、会心作だろう。筆者も心地よい満腹感に浸っている。1/4星おまけ。

評点★★★★☆

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「椎名豊はスゴいかもしれない」

 今回はけっこう難しい。好きな邦人ジャズピアニストを3人あげて、と言われると、
今なら佐藤允彦、大西順子(フュージョンだと国府弘子)、クリヤマコトをあげてしまうのだから、
自分でも好みがちょっと偏っているかな、という気がします。
 椎名豊のこのアルバム、腕のほどは他のプロのピアニストが認めるくらいというのもうなずけるし、
クリスチャン・マクブライドのベースは言わずもがな、クラレンス・ペンの、何だか聴いていて
やたら鼓舞されるドラムのプレイもいいなあ、と思ってしまいます。
 ただ、オリジナルもいいのだけれど、曲によってはどこかで聴いたような印象があり、
個性的な部分をもっと聴いてみたい、と言う気も。
その中で、9曲目は変拍子(5拍子?)でもあってかなり自由奔放なピアノを聴けました。
また、既成の曲ではモンク作品の5曲目はけっこうスリルがあって、しかも新鮮。
7曲目は何と「ジャイアント・ステップス」。アレンジでコードチェンジがのびているところがありますが、
難曲をメロディアスに弾きこなしています。ここのマクブライドのベースソロがまたすごい。
8曲目の「パリの四月」も意表をついています。
1曲目からして非常に元気印。アルバムは出だしが勝負です。
 買うか買わないか、ということになると、私にはちょっとオーソドックスかな、という気も
最初はしていましたが、何回か聴いているうちに、上記の曲だけでも買い、ということで。

評点★★★★☆

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)


「ピアノトリオ・ファンなら是非買いの一枚」

2回連続でJ−JAZZを斬ることとなったがハッキリ申し上げて今月のGDは良い。
比較して申し訳ないが先月の大坂がいろいろと考えすぎだった(と感じた)のに対して
椎名は純粋に一ピアニストとしての姿を届けてくれた。
特に奇を衒った演奏でもなく素直すぎるほどだが、
その分集中して聴けたし彼の力量も十分伝わるアルバムである。
特に素晴らしいのがスタンダード&ジャズメンオリジナルで、
‡@など勢いが凄くスリリングな快演だ。‡Cもしっとりとした仕上がりで良。
‡Dは私の苦手なモンクだが上手く料理してあり聴きやすい。
‡Gは原曲のイメージを損なわないように考えられている。
逆に‡Fは正攻法で行きすぎ?もうひとヒネリ欲しかった。
残念なのは椎名のオリジナル曲が今一つ魅力的でないこと。
‡A、‡Bあたり悪くはないけど、ちょっと気取りすぎている感じでのめり込めなかった。
あと曲によって、あるいは部分的にベース、ドラムがウルサすぎて
ピアノが霞んでしまう部分があること。
その分マクブライトとペンの快活な演奏が楽しめるのだけれど...
ともあれ、これまで5回のGDの中では最も優れたアルバムであり
ピアノトリオファンなら是非聴いておきたい一作だと思う。
ただしGDという冠がついている以上、評点はやや辛く4点。

評点★★★★

増間 伸一
Masuma's Homepage増間 伸一さん)


「手応え充分」

共演者に今をときめくマクブライドとクラレンス・ペン、
この組み合わせは椎名にとって勝負だったに違いない。
ピアノ・トリオという究極の編成で、頼りになるのはやはり自分自身。
ここで椎名自身があとの二人を触発して自らをかつてない領域へ
踏み込んでいくことが出来るのか。
答えは一曲目の"Pent-Up House"ですでに明瞭だと感じました。
プリティな感じのイントロから一転してエネルギッシュなソロの展開を見た後、
マクブライドのアルコ・ソロを挟んでペンとのフォーバース部分。
この一体感、このスピード感、きた、きたっ!という手応え充分です。
オリジナルの"Indigo Blue"でのイマジネイションに富んだ
リリカルなタッチは絶妙。
表情も豊かにシンプルに歌われるピアノは艶やかのひとこと。
さらっとテーマが演奏される"Giant Steps"では
ペンのブリリアントなドラム・ワークにサポートされて
流れるように展開していく椎名のソロ。
非常に冒険的なアプローチをしたラストの"Tristep"はダイナミズムに溢れた、
瀑布のようなイントロから次々曲調が変化するという展開を見せますが、
2番目の展開へ移った際に醸し出される妖しさには脱帽です。
なのに四星なのは、何故にペンのドラムを全面に押し出すような
ミキシングにしたのか、なんです。
場面、場面でシンバルばかりが強調されていて、手数王のペンをこうまで
くっきり押し出してしまうと、どうしたって椎名のピアノが奥まって聞こえてしまいます。
しかもそのシンバル、紙を舐めたときのような味気ない音になっちまって。
エンジニアの好みで椎名のせいではないのでしょうけど、これは痛い・・。
マスターテープを別な人がミキシングすれば
格段に良くなる可能性を感じますが。

評点 ★★★★

白岩輝茂
JazzPEOPLE白岩輝茂さん)


「あえて難癖をつければ」

正直5回目の今回が一番書きにくかった。
テクニック及び音楽理論のわからない私としては、
一の評価基準である聴いて気持ちが良いかに従うしかない。
しかも今回は(今回も?)原稿が一番遅く、他のメンバーの
意見をすべて読んでしまったので余計難しくなってしまった。
まずアルバムを通して聴いてみて、これといった不満はない。
それどころか、聴いている間は快感さえ覚える。
思い切ってヴォリュームを上げてみると、
マクブライドのベースが力強い。
その反面、ドラム特にシンバルの音にキレがない。
椎名のピアノはスピード感もあり、顔に似合わせない
優しいタッチ(失礼)も素晴らしい。
しかし、聴き終わるとすぐにまた聴きたくなる
という気が起きてこない。
この点が自分でもなぜだかわからないで困っている。
愛聴盤になるかどうかはもう少し聴き込んでから..
評点 ★★★☆

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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