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1998年10月 第4回作品

ウォーキン・ダウン・レキシントン/大坂昌彦

1998/10/23発売 キング・レコード(Paddle Wheel)  KICJ−351  税込み¥2,854

1.CHATTE TROIS COULEURS()
2.WALKIN’ DOWN LEXINGTON (Kim Nazarian、Masahiko Osaka)
3.THE RIVER FLOWS INTO THE NIGHT(Kim Nazarian、Masahiko Osaka)
4.CLOSE TO YOU (Hal David、Burt Bacharach)
5.AN ENGLISHMAN IN NEW YORK(Kevin Godley、Lol Creme)
6.CHICK−A−DEE(Kim Nazarian、Masahiko Osaka)
7.ONCE UPON A SUMMERTIME (Michel Legrand、Eddie Barclay、Eddy Marnay)
8.L−O−V−E(Milt Gabler、Bert Bert Kaempfert)
9.CIRCADIAN RHYTHM (Masahiko Osaka)
10.UNCHAAINED MELODY (Hy Zaret、Alex North)
  All arrangements by Masahiko Osaka

MASAHIKO OSAKA−drums / KIM NAZAARIAN−vocals(2,3,6,7)
MULGREW MILLER−piano / CHRISTIAN McBRIDE−bass
MARK GROSS−soprano&alto sax(4,5,8,9)
Guest Players
DUSKO GOYKOVICH−trumpet & flugelhorn(3,7)
PHIL WOODS−alto sax(2,6)



「大坂は素晴らしい、 but 共演者に物足りなさが」

ドラムの実力だけでなく、魅力的な自作曲が書ける人として
早くから評価の高かった大坂ですが、こと、このアルバムで
彼の評価はさらに飛躍的に高まるに違いないと感じました。

オリジナルの秀逸さは恐らく、今後彼の曲を誰かがカヴァーすることで
より鮮明になるのではと、先まで楽しみになってきました。
またそのドラムワークもリズムの変化、アクセントを付けるタイミング、
いずれをとっても聴いてる身が爽快感を覚える程で素晴らしい限りです。

ドラム・プレイヤーの彼にとって、自己名義のアルバムというのは
どの辺まで自分が全面に出るかを考えながらの編曲になると思う
のですが、このアルバムはあくまでオーソドックスな展開をしてます。
曲そのもを大切にする気持ちで仕上げたのだと感じました。

と、ここまで書けば諸手を挙げて五つ星かというと
実は何度聴いても音がすり抜けていってしまって
とらえどころがないのです。
訳はたったひとつ。
共演者のプレイにスピリットを感じないのです。
あまりに綺麗すぎるんです。

個人的な願望として、共演者のマルグリューにはもう少し
鍵盤を叩き付けるくらいの気持ちが欲しかったし、
ゴイコビッチにも冷凍物のピザ食わされてる気分が。
全体的に綺麗にまとまりすぎてる気がしたのです。
一抹の寂しさが残ってしまった。
評点 ★★★★☆

白岩輝茂
JazzPEOPLE白岩さん)


Jジャズおなどる...あなどるべからず!

 気乗りがしなかった。Jジャズというものを大西順子以外は聴いたことがない。
のっけから驚嘆した。素晴らしいドラマーではないか。知らずにいて恥ずかしい。
これほど叩けるドラマーは本場にもそうはいまい、という書き方自体が失礼だな。
メンバー全員気合が入っており缶詰音楽とは無縁の張り切ったプレイが喜ばしい。
Miller、McBrideとのトリオは鉄壁。Woods、Goykobichも先ずは実力通りの好演。
Grossが期待を上回る快演だ。Nazarianのボーカルも(華がない分)違和感はない。
勿論、主役は大坂だ。自身のソロは‡@と‡Gの2曲だけで残りは脇に徹しているが、
全てにおいて並々ならぬ存在感を誇示している。本作には彼の多彩なドラミング、
非凡なリーダーシップ、トータル・ミュージシャンの才が見事に捉えられており、
代表作に止まらず第一級の作品となった。SJ誌の評点はインフレ傾向が長いが、
こういうのを真正の4ツ星という。困った、CD棚にJジャズの置場がない。

評価=★★★★(4)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん


「余計な装飾は不要だったのでは...」

近年、評価の高い日本人ドラマーだが彼のアルバムを聴くのは今回が初めてだ。
私自身、ドラムの技術論は全くわからないが言われなければ日本人と気がつかない
レベルの演奏になっている。ドラマーとしての力量は一流なのだろう。
しかし本アルバムの構成にはまったく賛同できない。
まずボーカルは不要だと思う。アクセント程度に一曲入れるならまだしも、4曲は多すぎる。
ついでにゲストもいらない。せっかくD・ゴイコビッチやP・ウッズといった大物が参加しているのに
ボーカルナンバーに配しているので存在感が希薄で必要性が感じられない。
彼らに恨みはないが、とにかくネットリとしたボーカルが登場するたびに
聴いている側のノリが途切れてしまう。
作る側にすれば目的や狙いがあってやっていることだろうが、
私個人としては不満タラタラである。
なぜここまで書くかといえば、‡@が素晴らしいから。
70年代のスティープルチェイス盤にありそうな曲想で躍動感が素晴らしいトリオ演奏だ。
そしてラストの‡Iもよい。雰囲気がいいのだ。
つまり私にとって本作のベストはトリオ演奏の2曲である。
それだけに余計な装飾を施した間の曲がなんとも勿体なく感じてしまった。
ピアノ、ベースとも現代最高のメンバーを揃えたのだから、
全曲‡@のようなトリオでビシッと決めてくれたら評価はまったく違っただろう。
トータルな音楽家としての才を見せたかったのかもしれないが、
私には成功しているように思えない。

評点=★★★☆(3.5)

増間 伸一
Masuma's Homepage増間 伸一さん)


今の「ジャズ」が聴けるオススメのアルバム

 大坂昌彦のリーダー作をはじめて聴いた。
聴いて、おおっ、と思った理由は、アルバムの最初からドラムがビシバシとキマって、
しかも曲ごとに叩き方が変化に富んでいて、聴いていて非常に気持ち良い仕上がりになっていたから。
サポートに徹している場面でも、うまくバンド全体のサウンドをコントロールしている感じがします。
これほど存在感のあるドラムは他ではなかなか聴けないのでは。
 間違っていたらごめんなさい、なのですが、オリジナルの曲はメロディ、コード進行ともに
けっこう複雑な曲もあって、それでいて自然な流れでカッコよい。
ミュージシャン泣かせかも知れないけれど。
 スティングの5曲目、モニカ・セッテルンドの「ワルツ・フォー・デビー」でも演奏されていた
7曲目は好きな曲です。しかもカーペンターズの4曲目まである。私の世代ではうれしい選曲。
 ヴォーカルのキム・ナザリアンはじめ、適材適所でミュージシャンが参加していますが、
全体を通して演奏しているマルグリュー・ミラーのピアノが、ソロにバッキングに、けっこう快演です。
いやー、久しぶりにいいアルバムに出会いました。

評点 ★★★★★(星5つ)

工藤一幸
ジャズCDの個人ページ工藤さん)


     

「美しいが、なにか物足りなさが残った」

 ドラマーの技量をどうこう言う必要がない(どうせわからないのだが)大坂昌彦のリーダー作。
豪華メンバーに加えさらにゲストまで呼んだ「さあ、どうだ」といった話題作である。
たしかに全編破綻なくきれいに流れていった。
間違いなく安心して聴けるアルバムではある。
しかしこれで満足できるかとなると、首をひねってしまう。
キム・ナザリアンのボーカルはすごく上手。だがどうも好きになれない。
ゲストの二人とも美しい音を奏でてはいるが、どうしてもという必然性を感じない。
大坂本人が望んだ人選だったのか?疑問が残る。
管はマーク・グロスだけでも良かった。(期待以上の出来)
大ヒットした4曲目はややおとなしすぎる印象、スティングの5曲目の方が
ノビノビと吹いている感じで良い。
一番のお気に入りは8曲目の「ラブ」。
このノリで全部やってくれればもう半星プラスだったのに。

評価=★★★☆(星3つ半)

  STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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