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1998年9月 第3回作品

SWEET GERGIA PEACH/RUSSELL MALONE
(スウィート・ジョージア・ピーチ / ラッセル・マローン)

1998/9/23発売 ユニバーサル・ビクター(Impulse 原盤)  MVCI-24011  税込み¥2,541

1. Mugshot(Malone)
2.To Benny Golson(Malone)
3.Strange Little Smile / With You I'm Born Again (Malone/ Shire-Connors)
4. Sweet Geogia Peach (Malone)
5.Rise (Armer-Badazz)
6.Mean What You Say(Janes)
7.Song For Darius (Malone)
8.Bright Mississippi(Monk)
9.Someone's Rocking My Dreamboat(Rene-Scott-Rene)
10.For Toddlers Only (Carter)
11.Swing Low,Sweet Chariot (Traditional)
12.Yesterdays (Kern-Harbach)

12. Yesterdays was extra track for International only

Russell Malone - guitar / Kenny Barron - piano
Ron Carter- bass / Lews Nush - drums
Steve Kroon - percussion on track1&5



   「けっこう売れそうなアルバム。でも私の好みとはちょっとズレる。」

 インパルスへの移籍第一弾。
トミー・リピューマのプロデュースであれば、かなり気合が入っているアルバムです。
参加メンバーもすごい。歌心はあるしピッキングも正確でフレーズもいいので、
そういう意味では聴いてて安心。
基本的にクァルテットで勝負していて、むやみに早弾きをしないでリラックスして弾いています。
ただ、いろいろなギタリストの影響を感じさせ、器用に自分の演奏に取り入れているようですが、
器用すぎて、ギターに個性とスリルを求める私の好みとはちょっとズレてしまいます。
 1、4、7曲目の彼の作曲とギターのフレーズ、3、9曲目のギターでバラードを弾くうまさ。
5曲目のハーブ・アルバートで有名な曲の渋さ、11曲目のソロ・ギター。
でも一番印象に残ったのは日本盤ボーナストラックの12曲目ギターでの「イエスタデイズ」。
買うべきか買わざるべきか。いつもならこのアルバムは候補からはハズれているような気も。
 この場でやはり9月に発売されたアル・ディメオラの「インフィニット・デザイア」(Telarc)
の方が好き!と言ったら袋叩きにあいそうなのですが...。でも本当。

評点は★★★☆(星3つ半)です。

工藤一幸
ジャズCDの個人ページ工藤さん)


「自分をさらけ出せばもっと良かったのに・・」

サックスのような菅楽器とか弓で弾くヴァイオリン等なら、
肉声に近いニュアンスでメロディを唄わせることも技術さえ
あれば簡単ですが、ピアノやギターのような減衰系の楽器で、
ヴォーカルのように弾くのは至難の技。

いったん弾かれた弦はどうビブラートをかけても音は減衰していく
宿命ですから、発声でいうコブシはかけようがない。
そんなギターの弱点をうち消すコード弾きといったテクニックさえも
一切使わずに弾き通した‡Dには、このアルバムにかけるマローンの
根性を感じてしまいました。

そんなプレイ・スタイルにも象徴されるように、
ギター弾きマローンの全身全霊が6本の弦に
注ぎ込まれた入魂のアルバムとなってます。

唯一の不満は、渋く、渋くと意識しすぎたせいか、
アルバム全体にキレが乏しいのと、
マローンの強烈な個性がガツンとこない点でしょうか。
しかし次回作は相当に期待していいものと思います。

そう言うわけで、充分に秀作ではありますが、
ゴールド・ディスクにするには、まだちょっと薄味です。

評点:★★★★

白岩輝茂
JazzPEOPLE白岩さん)


「よく出来た優等生的秀作」

本企画も、ようやくノーマルなジャズアルバムのレビューになり少し安心している。
で、ラッセル・マローンである。
ギターのように音に表情をつけにくい楽器がメインとして60分以上、
聴き手を飽きさせないのは至難の技だと思うが、本作は選曲の良さでその点をカバーしている。
アップテンポの曲で聴かせる早弾きも聴いていて気持ちが良い。
この人の場合近い世代の黒人ジャズギタリスト(M・ホイットフィールド、K・ユーバンクスら)に
比べギターの音がまろやかで太い感じがする。
録音の関係もあると思うが、アルバムを聴き通しても疲れないのはそんな理由もあるのだろう。
曲単位みると‡@、‡Cあたりはアップテンポでカッコイイ曲。
‡A、‡E、‡Fはゆったりとしたメロディアスな曲で本作ではもっとも光っている。
いかにもジャズらしい‡Iは、軽快そのもの。H・アルパートのカヴァー‡Dは、
はっきりいって成功しているとは思えないが、そのチャレンジ精神は評価しておこう。
アルバム全体の評価としては、いかにも優等生的な作りである。
バックのメンバーも堅実なプレイを聴かせているし、ジャズギター入門アルバムとしても勧められる。
逆に少々スリルや若さが足りないかな、という感じもした。
いろいろ書いたが、よく出来た秀作であることは間違いない。
評価=★★★★(4)

増間 伸一
Masuma's Homepage増間 伸一さん)


 

「正統派ジャズ・ギターを堪能」

 Russell Maloneである。大物に相応しい名前だ。
筆者は第3作の"WhollyCats('95Venus)"しか知らないが、
技巧に走った嫌いがあり余り評価していなかった。
彼を見直したのは諸兄と同様 Diana Krall Trioでのプレイであった。
ChristianMcBride(b)とのコンビは、Barney Kessel(g)とRayBrown(b)に迫る見事なものだ。
旧作は彼も不満だったらしく、"音楽を聴かせる"本作のコンセプトが理解できる。
快調に飛ばすアップ物も鮮やかだが聞き物はバラードとメディアムで、明らかに
勝負に出ている。この手のプレイはごまかしがきかない。楽器のコントロールが
余程堅固でないと様にならない。5曲で見せた作曲のセンスも非凡で須く合格点。
没個性的との声あり。楽想の収斂は確かに課題だが、暖かく美しい音色と明確な
タッチは得難い個性だ。久々に正統派ギターを堪能した。ギターの未来は明るい。
饒舌ではないが雄弁、聴くほどに味わい深まる佳品だ。付録の‡Kは些か粗い。
評価=★★★★(4)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん


     

「ウォームなサウンドに身をゆだねて...」

 本企画3弾目にして初めてゴールドディスクの名に値するアルバムの登場だ。
ラッセル・マローンのリーダー作は92年のデビュー盤も結構好きで聴いているが、
本作はそれよりももっと気持ち良く聴けた。
ハリー・コニックJr.には余り食指が動かないが、マローンのオーソドックスな
ギターは安心してくつろげるサウンドだ。
最初から最後まで、暖かい音色に包み込まれるような快感に浸ってしまう。
ケニー・バロンのピアノも美しい音で、ギターをより引き立てている。
ルイス・ナッシュの軽快なドラミングもスカッとさわやかだ。(コーラよりも)
マローンのオリジナル曲はどれも水準以上の出来で、作曲家としての
才能もますます期待が持てる。
曲順もかなり工夫されているようで、12曲(64分余り)を通して聴いても
飽きることがない。
全曲ハズレはないが、あえて選べば6曲目の「MEAN WHAT YOU SAY」か
7曲目の「SONG FOR DARIUS」あたりがマイ・ベスト。
いずれにせよ、私の愛聴盤の一枚に加わることは確実である。

評価=★★★★☆(星4つ半)

  STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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