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2001年8月 第34回作品

フレンチ・バラッズ/アーチー・シェップ・カルテット

2001年8月22日発売  ヴィーナス・レコード TKCV−35096 税込み¥2,800

アーチー・シェップ

1.What Are You Doing The Rest Of Your Life(これからの人生)
2.Putite Fleur (小さな花)
3.Les Feuilles Mortes (枯葉)
4.L' Ame Des Poetes (詩人の魂)
5.Gigi (ジジ)
6.April In Paris (パリの四月)
7.Sous Le Ciel De Paris (パリの空の下)
8.Deja Vu (デジャ・ヴ)

アーチー・シェップ (ts)
ハロルド・メイバーン(p)
ジョージ・ムラーツ(b)
ビリー・ドラモンド(ds)


「何故にシェップだったのか・・・」

パリをテーマにしたバラード・アルバムということで
大スタンダードやシャンソンの名曲がぽんぽん飛び
出しますが、さすがテーマ部分から存分にシェップ
色を打ち出した演奏で、自己の世界というか流儀を
確立した人には題材は何でも良いという感じです。

反面、そのあまりの濃厚さにテーマとはほど遠いく
らい作品のイメージが重くなっていますが、そこをメイ
バーンのピアノやスインギーなリズム隊がが救ってる
感じもしました。これをもしメイバーンのピアノ無しトリ
オで聴いたら非常に体力を消耗したかも知れません。

シェップの吹くバラードにはブラックへのこだわりや怨
念のようなものが滲むので、ときに鬼気迫るものを感
じてしまうのですが、名手ムラーツのベースやドラモン
ドのスインギーなバッキングが一服の清涼剤になって
中和されている感じです。

個人的には何故にシェップにこのような選曲を与えた
のかの真意が全く判りませんでした。本人が好んで
やったとは思いにくいアルバムでありました。

評点 ★★★☆(三つ星半)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「相変わらずの枯れ具合」

 約2年半前にアーチー・シェップの「トゥルー・ブルー」を取り上げていて、
その時の衝撃を星5つという形で私は書いていました。さて、今回はどうなので
しょう。相変わらずの訥々としたフレーズ、ルーズな感じ、サックスからもれて
くる息の音、そんな枯れ具合は相変わらずです。ソフィスティケイトされた咆哮
とも言えるような、ワン・アンド・オンリーの世界。今回はフレンチバラードに
挑戦しています。ミディアム・テンポの曲も半分ぐらいあるにしても、フランス
らしい哀愁漂うメロディのオン・パレード。あらゆるヴァージョンが出尽くして
いる感じの3曲目の「枯葉」はピアノとのデュオ。彼の個性で新しく蘇りました。
6曲目のフレーズの崩し方もけっこうカッコ良い感じ。7曲目は行くところまで
行ってしまっているソロですが、彼だから許せるという部分かも。8曲目のみ彼
のオリジナル。他の曲と違和感のない曲ではあります。全体を通して、渋い!と
言えるサックス。特に1曲目は出だしから渋かったです。
 ここまで個性的だと好き嫌いも出てくるかもしれません。ただ、それぞれの曲
のメロディそれ自体でもひきつけるものはあると思います。ヴィーナスの音作り
は相変わらず熱くてうまいなあと感心しますが、最初にシェップのヴィーナスの
アルバムを聴いた時と比べると、またか、という思いも少々あって感動度は前回
ほどではなかったことを白状しておきます。

評点:★★★★(四つ星)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)


「情念の噴出か演技過剰か」

本作はVenus第4作。Harold Mabern(p)、George Mraz(b)、Billy Drummond(ds)と
組んだフレンチ・バラッズ集。またしても降参。ムムっと思わせる瞬間もあるが、
心を揺さぶられるに至らない。好評が別世界の事に映り、自分に疑念すら生じる。
彼の吃り、軋み、捻れを黒い情念の噴出と聴ければいいのだが、演技過剰ないし
ペテンとしか聴こえず不快だ。良さを見出せない私が評点をつけてはまずい。

評点割愛

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「本音を噛み殺すシェップの集金アルバム」

 ヴィーナスに移籍後のシェップは徹底したバラード路線を敷いているが、もう
いい加減飽きてきた、というのが正直な感想である。確かにシェップの持ち味で
ある辛口のダーティートーンは健在だし、どんなベタベタの素材にもズッシリと
スピリチュアルな重みを与えられるところなどは流石だと思う。しかしそろそろ
本音で吹いてほしいと感じる。まあヴィーナスからのGD指定バラード作となれば
売上も期待できるだろうし、シェップにとっても適当にバラードを吹いていれば
そこそこのお金になるのだろうから美味しい企画ではあるだろう。だが現在でも
他のレーベルにおいてはシェップが全盛時ほどではないにせよ、先鋭的な演奏を
しているという事実を見逃してはならないだろう。本作を聴いていても金の為に
本音を噛み殺す妥協したシェップの姿が見え隠れしてしまい、どうにも感情移入
できないのだ。最近好調が伝えられるメイバーンの良さもあまり伝わってこない
のが残念だ。この人はもっとガンガン弾き込むようなセッティングの方が魅力を
発揮するタイプだと思う。
 とはいえ決して劣悪な作品などではなく、近年のシェップに惚れ込んでいる方
には満足いく内容だろう。ただし前作「True Blue」に比べると一段落ちるのも
確かだ。

評点:★★★☆(三つ星半)

増間 伸一
Masuma's WebSite増間 伸一さん)


「さすがにマンネリの危機か」

 本企画始まって以来初めて、同じアーティストの作品を取り上げました。
以前のバラード三部作、中でもブルー・バラードは私のお気に入り盤です。
しかし、今回はどうも何度も聴こうという気持ちが湧いてこないのです。
1曲目の冒頭からシェップならではのテナーが響いてきて、「小さな花」
などは意表を突く展開が大いに楽しめます。ところが聴き進むに連れて
ちょっと退屈になってきました。一曲ずつ聴けばどれも美しいメロディーの
良い演奏とは思いますが、アルバム一枚を通して聴かせるだけのサムシング
に欠ける気がします。8トラック・テープ全盛時、サム・テイラーが歌謡曲
を吹く企画がありましたが、そんなことを思い出してしまいました。
ヴィーナス・レコードの新たなる企画に期待して次作を待つことにします。

評点:★★★☆(三つ星半)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします
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