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2000年3月 第19回作品

ヨーロピアン・クインテット/ジェシ・ヴァン・ルーラー

2000年3月25日発売 ユニバーサル・ミュージック PHCF 3529  税込み¥2,548

1.Debits'n Credits (Jesse Van Ruller)
2.Bewitched (Rodgers/Hart)
3.The Ruller (Jesse Van Ruller)
4.De Poesch (Jesse Van Ruller)
5.I'll be seeing you (Kahal&Fain)
6.Two Walk (Jesse Van Ruller)
7.Green's Greenery(Grant Green)
8.Vienna Night Express(Jesse Van Ruller)
9.You’re my everything
10.This could be the start of something Big (Warren/Dixson/Young)

ジェシ・ヴァン・ルーラー (g)
ピーター・ウェニガー(sax)
ジュリアン・ジョセフ (p)
ニコラス・サイス(b)
マーク・モンデサー(ds)



「リリシズム溢れる快演」

 パット・メセニー、ジム・ホール、ジョン・スコフィールドといった
錚々たる人たちがこのジェシの作品に賛辞を寄せていますが、
これだけの技術と表現力を兼ね備えた若手が登場したのですから
絶賛されるのも頷けます。

全10曲中5曲が彼のオリジナルなのですが、全くそんな感じがしないくらい
いつか何処かで耳にした懐かしさを覚えるのが不思議です。きっと彼の
曲作りのイメージがそれまで自分が主に吸収してきたと思われる、
70年代以降の数々の名曲・名演に導かれているような気がします。

そのせいか、曲の一部を聞いただけで彼だと判る強烈な個性に欠ける
点が否めないところにやや物足りなさを感じるかも知れません。
とはいえ、これが彼自身の初リーダー作ですから、これでとりあえずは
スタートラインについた感じ。ここから先何処へ向かうのかが楽しみと
いうものです。

そんな訳で、この作品がGDというのは彼自身にとっても面はゆい
成り行きではなかったのでしょうか。たとえばGDと平行していわゆる
「注目されるべき作品」的な賞があればよりそちらにこそ相応しい
アルバムであると感じました。

とはいえ内容は文句無し、将来のジャズ・ギター界の重要な位置に付く
存在になる可能性を持っている人だと感じました。必聴でしょう。

評点 :★★★★☆(四つ星半)

白岩輝茂
【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE】白岩輝茂さん)


「素晴らしい新時代のギタリスト」

 オーソドックスなギターはあまり得意ではないなあ、と思いつつ、アルバムを
聴きはじめてぶっ飛びました。若いのに正確無比と言えるくらいのピッキングと
その鮮やかなフレーズに。しかもこのアルバムを録音した年は'96年。ジェシ・
ヴァン・ルーラーは'72年生まれということなので、24歳でこのアルバムを
録音しているということになります。
 テーマの繰り返される転調が印象的な1曲目、ゆったりした演奏を聴かせ歌心
あふれる2曲目、特徴あるリズムのテーマで、彼の速弾きと各人のソロが面白い
3曲目、ジャジーな5曲目、グラント・グリーン作のうれしい7曲目、けっこう
ノリの良い10曲目と、幅広い演奏を聴くことができます。4、6、8−9曲目
などのように、比較的静かな曲でもバリバリと弾いてみせる場面があるのですが、
うるさく感じることなく聴くことができるのは、やはり彼のピッキングセンスが
良いからでしょう。オリジナルは5曲ありますが、どれも作曲のセンスの良さを
感じることができます。
 '50−60年代のギタリストの影響というよりは、誰と特定するのは難しい
のですが、もっと後の世代のギタリスト達の影響をより強く感じます。それだけ
若いということなのでしょう。他のメンバーも良い演奏を聴かせるので、ギター
のアルバムとしては多くの人が納得できるアルバムではないかと思います。若く
してこの完成度。恐るべし、ジェシ・ヴァン・ルーラー。今後にも期待してます。

評点:★★★★☆(四つ星半)

工藤 一幸
ジャズCDの個人ページ工藤一幸さん)

 

「予想を裏切る好盤」  

 青白くひ弱そうなジャケ写、ヨーロピアン〜というタイトル、これ見よがしに
書かれた大物からの賛辞、聴く前からネガティブな要素が多く、本作にもあまり
期待はしていなかった。しかし一聴してみて良い意味で裏切られた気分だ。(1)
など意外なほどに骨太のハードバップだし、新主流派的雰囲気の(4)(8)もクール。
そしてアグレッシブな激情ナンバー(3)がベストトラックだ。ショーターライクな
ソプラノ、力強いギター、モーダルなピアノの絡みがクールに燃え上がる。(7)で
グラント・グリーンの曲を取り上げるセンスも心憎いし、自身のオリジナル曲も
ギターの特性を活かしたナンバーになっており、こちらの才能もなかなかのもの。
ギタリストとして様々な表情を見せているが、これがややアルバムのまとまりを
欠く結果となっている。しかし小さくまとめるよりも、色々なことにチャレンジ
しようとしている進取の精神を評価しよう。
 共演者ではやはりジュリアン・ジョセフが光る。今から10年以上前コートニー・
パインらと共にブリティッシュ勢として台頭してきた頃から気にかけていたピアノ
だが、まさかここで彼のプレイに出会えるとは思わなかった。モードを基本とした
プレイは相変わらずフレッシュである。(5)(6)あたりが聴きどころ。
 ここしばらくのGDの中では一番高く評価したい。セルフプロデュースということ
からも、ルーラー自身が思う存分やりたいことをやったということがわかる。今後
はこの中から更に自分の方向性を絞込むことで、より高いレベルの統一性を持った
アルバム制作を期待する。

評点:★★★★(四つ星)

増間 伸一
Masuma's Homepage増間 伸一さん)


「躍如として面目なし」

 大御所達の賛辞に惑わされてはいけない。新鋭がデビューする度に社交辞令を
乱発してきた業界だ。英文献辞を読めば奏者としての評価に留まることは明らか。
未だギター小僧、演奏意欲が表現意欲に勝る。強烈な個性と新味は感じられない。
流麗なフレージングは時に前後の脈絡を欠く。アップの@Bは覇気漲る快演だが
中盤から似たテンポの曲が続き次第にダレる。バラード演奏は先達の引き写しに
過ぎずプリプリ響くトーンも興醒め。アップで技巧で惹きつけることができても
ミディアム以下は音楽性が決め手となる。表現意欲と音楽性の深化が課題だろう。
やはり注目の新鋭Kurt Rosenwinkelのデビュー作も期待外れだったがサウンド・
クリエイターとしての才はRosenwinkelが優る。 聴後の印象が乏しい点は好勝負。
欧州ジャズはそれぞれのお国柄が出るものだが各国混成部隊ゆえか無国籍に響く。
ネオ・ハードバップ派ともネオ新主流派ともつかない。サイドは欧州らしく達者。
良くも悪しくも若者らしい。躍如としているが同業者が持ち上げるほどの面目は
施しておらず決定的な魅力を欠く。可もなく不可もなし。なくても困らない。

評点:★★★☆(三つ星半)

林 建紀
JAZZ DISC SELECTION林 建紀さん)


「疾走する若武者」

 ファッション雑誌のようなジャケットに似合わず、痛快なジャズが聴けた。
ミケル・ボルストラップのアルバムでちらっと聴いたときにも思ったが、
ゆったりとした曲でもスピード感があり気持ち良い。
例えれば、アクセルを踏めば鋭く加速する高級車でのクルージングか。
一曲目から快調な滑り出しで、グループとしてのまとまりも良い。
全体の半分5曲が自作曲だが、どれも耳障りの柔らかい佳曲揃いだ。
中でも(4)ではジュリアン・ジョセフのピアノが大変美しい。
個人的に一番のお気に入りはキャッチーなメロディーの(6)。
どこかで聴いたことのあるような懐かしさを覚えた。
(8)も静かながらベースやピアノのソロが光る。
 全体を通して安心感をもって聴ける演奏であり、初心者にも
取っつきやすいアルバムに仕上がっている。
惜しむらくは曲想がどれも似た傾向で、やや単調な点である。
 今後は、この優等生的な枠をうち破るようなサムシングを身につけ、
スケールの大きな演奏と曲作りに期待する。

評点:★★★★(四つ星)

STEP 片桐俊英


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  制作者:片桐俊英  メールはste p@awa.or.jpまでお願いします


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